「つわりアピール」にうんざり…?妊婦と職場のすれ違い、乗り越えるヒント
妊娠中のつわりは、経験した人にしか分からないほど辛いもの。でも、その辛さが周囲に理解されず、「つわりアピール」と受け取られてしまうことも…。特に職場で、つわりで苦しむ妊婦さんと、それを受け止める周囲との間に生じる「うんざり」という感情は、誰もが望まないすれ違いですよね。
今回は、このデリケートな問題に焦点を当て、妊婦さんの「しんどい」と職場の「うんざり」の間に何があるのか、そして、どうすればこのすれ違いを解消できるのかを一緒に考えていきましょう。
なぜ「つわりアピール」と感じてしまうのか?職場の本音
妊婦さんにとっては命がけのつわり。しかし、職場の人から見ると、以下のような理由から「アピール」だと感じてしまうことがあります。
- つわりの症状が見えにくい・個人差が大きい: 「吐き気がある」と言われても、実際に吐いている姿を見なければ、その辛さを想像しにくいものです。また、つわりの症状は個人差が大きく、全くない人もいれば、日常生活が困難になるほど重い人もいます。そのため、「大したことないのでは?」と感じてしまう人もいるかもしれません。
- 業務への影響: つわりで体調が優れない妊婦さんがいると、急な体調不良による休憩や早退、欠勤などが増えることがあります。その分、他の社員が業務をカバーすることになり、一時的に負担が増えることで不満が募ることも。
- コミュニケーション不足: 妊婦さんが自分の体調をどこまで伝えているか、職場側がどこまで理解しているか、という情報の共有が不足していると、お互いの状況が見えにくくなります。結果的に「大げさに言っているのでは?」と捉えられてしまう可能性もあります。
- 周囲の妊婦経験の有無: 職場の同僚や上司の中に、つわりを経験したことのある人が少なければ少ないほど、その辛さは理解されにくくなります。「昔はみんな我慢していた」といった意見が出ることもあり、世代間の価値観の違いも影響する場合があります。
「うんざり」という感情は、悪意から来るものではなく、**「どう対応したらいいか分からない」「自分の負担が増えることへの戸惑い」**から生じることが多いのです。
妊婦さんの「しんどい」を理解する
妊婦さんにとって、つわりは想像を絶する苦痛を伴います。
- 吐き気と嘔吐: 食事が摂れず、脱水症状になることもあります。
- 倦怠感と眠気: 体が常にだるく、集中力が続きません。
- においづわり: 特定のにおいで吐き気が誘発され、日常生活に支障をきたします。
- 食べづわり: 空腹になると気持ち悪くなるため、常に何か口にする必要がありますが、それもまた辛い場合があります。
- 精神的な落ち込み: 体調不良が続くことで、気分が落ち込んだり、イライラしたりすることもあります。
これらが数週間から数ヶ月続くわけですから、仕事に集中できない、普段通りの生活ができないのは当然のことです。妊婦さんは、好きで体調が悪いわけではありません。むしろ、仕事に迷惑をかけていることに罪悪感を感じている人も少なくありません。
すれ違いを解消するための具体的なヒント
妊婦さんと職場の双方が、少しの工夫と理解をすることで、この「すれ違い」を乗り越えることができます。
妊婦さん側ができること
- 具体的に症状を伝える: 「しんどい」だけでなく、「吐き気がひどくて集中できない」「特定のにおいで気分が悪くなる」「頻繁に休憩が必要」など、具体的な症状とそれによって何が困るのかを伝えましょう。
- 事前に相談・情報共有をする: つわりが始まる前に、直属の上司や人事担当者と面談し、妊娠中の体調の変化や、必要になりそうな配慮について事前に相談しておきましょう。医師からの診断書なども有効です。
- 業務の調整を提案する: もし可能であれば、「この作業なら座ってできる」「午前中は集中しやすいので、この業務を優先したい」など、自分から業務調整のアイデアを提案してみるのも良いでしょう。
- 感謝の気持ちを伝える: 周りの人がサポートしてくれた際には、「ありがとうございます、助かります」と具体的に感謝の気持ちを伝えることで、良好な関係を築けます。
- 無理はしない: 最も大切なのは、妊婦さん自身の体と赤ちゃんの安全です。無理をして症状が悪化する前に、周囲に助けを求めましょう。
職場側ができること
- つわりへの理解を深める: つわりが単なる「気分の問題」ではなく、深刻な体調不良であることを認識しましょう。つわりに関する正しい知識を共有する機会を設けるのも良いでしょう。
- 具体的な支援体制を整える: 業務の割り振りを見直したり、体調不良時の休憩スペースの確保、フレックスタイムや時差出勤の導入など、具体的な支援策を検討しましょう。
- コミュニケーションの機会を作る: 定期的に妊婦さんと面談し、体調や業務状況について率直に話し合える機会を設けましょう。困っていることや要望がないか、積極的にヒアリングすることが大切です。
- 周囲への配慮を促す: 他の社員に対しても、妊婦さんへの理解と協力をお願いするアナウンスをしたり、業務負担が増える社員への感謝やねぎらいの言葉を忘れないようにしましょう。
- 制度の周知と活用: 育児介護休業法に基づく母性健康管理措置など、企業に求められる義務や、利用できる制度をきちんと周知し、活用を促しましょう。
まとめ:互いを「思いやる」気持ちが大切
「つわりアピール」と「しんどい」は、どちらも相手への「思いやり」が欠けた時に生じる感情かもしれません。妊婦さんは自分の体調を伝え、職場はそれを理解し、サポートする。そして、支えてくれる周囲への感謝を忘れない。
誰もが気持ちよく働ける職場環境を作るためには、妊娠中の社員と職場の双方が、互いの立場を理解し、歩み寄る努力が必要です。そして、そうした環境は、妊娠・出産を考えている社員だけでなく、全ての社員にとって働きやすい環境へと繋がっていくはずです。